骨や関節以外の、運動器を構成している重要な組織である靭帯、腱、筋肉。
それらのケガについて簡単に説明しています。
靭帯とは、骨と骨とを結合させている強靭な繊維組織。バスケットボールやバレーボール、スキーなどのスポーツ時に、強い力が働くことで損傷し、時には断裂することもあります。
靭帯断裂の代表的なものとしては膝関節の前十字靭帯・後十字靭帯の断裂や、足関節の靭帯断裂があげられます。
強い痛みと腫れがおもな症状で、痛みのために患部周辺を動かせないこともあります。また膝関節の十字靭帯を損傷した場合、グラグラと不安定感が強くなります。放置すると損傷した靭帯が膝関節の組織(軟骨面や半月板など)を傷つけてしまい、骨の変形をきたすこともあります。
応急処置として、RICE法を行ってください。
治療には「手術療法」と、手術を行わずに、固定や装具を使ったリハビリテーションで治療する「保存療法」があります。将来的にも競技スポーツに関わっていきたいかどうか、脚に負担のかかる仕事をしているかどうかなど、損傷の状態をもとに、本人の意向を尊重して治療方法を選択します。
前十字靭帯は、膝の中にある4つの靭帯のうちの1つですが、一旦損傷や断裂、あるいはゆるんでしまうと、他の靭帯に比べて治りにくいという特徴を持っています。他の靭帯は「切れたところを縫って、ギプスをしばらく巻く」という治療法をとることがありますが、前十字靭帯はこのような方法で治るのは限られた場合だけです。30才代以下の方、スポーツを定期的に行う方は、この状態を放置するのは良くないでしょう。
「腱」は、筋肉の先端部分にあり、骨にしっかりと固着している強靭な結合組織です。筋肉は伸縮性があるのですが、腱はあまり伸縮しません。そのため、無理な力で引っ張る(引っ張られる)と、腱がプッツリと切れてしまうことがあります。これが「腱断裂」です。
身体のどこの部位でも起こりますし、手や腕などでもよく見られます。高齢者の方の場合は、見過ごされがちですが肩の肩腱板断裂も多く発生しています。ここでは、腱断裂のなかでも圧倒的に多い「アキレス腱断裂」について簡単に解説します。
アキレス腱断裂は、スポーツをしている際の踏み込みや、着地・ダッシュ時などでよく起こります。断裂時には、バチッという音が聞こえたり、かかとを蹴られたような感覚があり、激痛が走ります。アキレス腱を切ると歩きづらくなりますが、足のほかの筋肉などがあるため、完全に歩行不能にはなりませんが、つま先立ちができなくなります。
アキレス腱断裂が起こったら、応急処置として患部を冷やして仮固定し、すぐに整形外科を受診してください。
断裂した部分に凹みが見られたり、凹みに触れることができます。うつ伏せに寝たまま膝(ひざ)を直角に曲げた状態でふくらはぎをわしづかみにすると、健常であれば足首がひっぱられるように底屈しますが、アキレス腱を断裂してしまうとまったく底屈しません(トンプソンテスト)。画像診断は一般的には必要ありませんが、場合によっては、超音波やMRIなどが行われます。
治療には、手術を行ってアキレス腱を縫合する方法と、手術を行わず、固定と装具療法で回復に導く保存療法の2種類あります。手術療法と保存療法を比較したとき、いずれの方法を選択しても長期的にはほとんど差はありません。
手術の方が若干回復は早くなるため、スポーツ選手では手術を行うことが多いのですが、感染などのリスクもありますので、一般の方の場合には保存療法をおすすめします。いずれにしろ、損傷の状態や患者さんのご希望などを考慮し、ケースバイケースで治療方法を選択し、早期から適切なリハビリテーションを行います。
雑骨折のように必ずしも受傷当日に受診する必要はありませんが、なるべく早く整形外科を受診しましょう。予防法としては、スポーツ前にストレッチング、ウォーミングアップを十分に行うことが大切です。
筋肉を急激に強く収縮させたため、筋肉が断裂してしまった状態を「肉離れ」、正確には「筋断裂」あるいは「筋挫傷」といいます。
短距離走のスタートダッシュやジャンプなど、スポーツをしているときに発生することが多く、太ももやふくらはぎなど、脚によく起こります。強く引っ張られ筋肉が伸びすぎることが発生原因です。
肉離れが起きると、電撃が走ったような激痛が生じ、動けなくなってしまいます。ブチッという音が聞こえ、筋肉が切れた感覚がわかる場合もあります。損傷が強い重症の場合、見た目に筋肉が凹み、自力で歩くことができなくなります。
肉離れを起こしたら、患部を冷やして安静に保ち、なるべく早く整形外科を受診しましょう。軽症の場合は、適切な応急処置を行えば放置しても自然に治ります。捻挫のときのようにテーピングをしてよく冷やすこともよいでしょう。マッサージやストレッチをして刺激を与えるのは、肉離れが悪化する原因になるのでやめましょう。
歩くことが難しいほど強い痛みを伴う場合は、病院で適切な固定処置が必要となり、痛みがひどい場合は非ステロイド系抗炎症剤が処方されます。1〜2週間経過して痛みが消えたたころから、筋力トレーニングやストレッチなどのリハビリを開始します。
肉離れは適切に処置すれば、もと通りスポーツを行えるようになります。しかし、早く復帰したいと、完治していない状態で無理に競技を行うと、損傷した筋肉がクセになって肉離れを繰り返すことにもなりかねません。長い目で見たら、少しの間辛抱するのが賢明です。
また競技を行う前には、しっかりとストレッチなどのウォーミングアップを行って、筋肉をならすようにしましょう。それによって、かなり肉離れが予防できるはずです。