日常的に起こりやすい比較的軽症の外傷(ケガ)について解説していきます。
外傷には感染症の危険がつきものです。軽症であっても、
軽く考えずに病院を受診されることをおすすめします。
また、初期段階の処置が不適切だと傷痕が残ってしまい、外見上の問題となることがあります。
なるべく痕を残さないためにも、医療機関で適切な治療をしてくださいね!
日常的に誰もが経験する切り傷ですが、自分が思っているよりも深く切り、神経・腱・骨などまで損傷を受けている場合があります。病院では、損傷を受けた箇所を慎重に確認したうえで、適切な処置を行います。
また、土やサビなどが傷口に入ってしまった場合は、破傷風などの感染症の恐れがあります。異物を取り除いた後、必要であれば抗生物質を投与して感染症の発生を予防します。出血が多い場合には縫合処置も行います。糸で縫わずに「ステリテープ」という創傷閉鎖用の滅菌テープや医療用のホッチキスを使って、患部を固定する場合もあります。
普段はあまりお料理をしないお父さんが、週末にピーラー(皮むき器)を使用して深い切創を負うことがたびたびあります。力をこめてピーラーを使用すると、神経や腱まで損傷して緊急手術が必要になることがあります。ピーラーの使用には十分に注意して下さい!
スポーツや軽い転倒などで起こりやすい擦り傷。砂や土などが入ってしまうことが多く、感染症に注意が必要です。まずは綺麗な流水で洗い流して下さい。擦り傷は、意外に傷痕が残りやすいものです。とくに女性が顔を擦りむいた場合など、できるだけ痕を残したくありませんので、病院で正しい処置をするようにしましょう。
植物のトゲや木の破片、ガラスなどが刺さるケガは日常的によく起こります。見た目よりも損傷が深いのが特徴で、とくに釘やキリなどが刺さった場合、神経・腱・骨・臓器などを損傷している可能性があります。また感染症を起こしやすいのが特徴です。抗生剤などの服用が必要となる場合があります。大きなものが刺さった場合、自分で抜かずにそのまま病院へ行くようにしましょう。
日常的に起こりやすいのは、犬や猫などのペットによるものかと思います。動物はとてもかわいいのですが、いろんな菌を持っているので、とくに感染症への注意が必要です。病院では感染症の予防に重点がおかれ、抗生剤の投与や破傷風の予防注射なども行われます。また、菌が入った状態で傷口をふさいでしまうと、膿が溜まることがありますので、傷口は開いたままの状態で治療を行います。
猫の咬み傷・ひっかき傷には注意が必要です。猫が持つバルトネラ属の菌が牙や爪から入り込み、リンパ節の腫れ・痛み・発熱などを引き起こす「猫ひっかき病」に感染する心配があります。「猫ひっかき病」はペットブームの高まりとともに近年増加しています。免疫力の弱い子どもが感染すると重症化することがあるので、充分注意してあげてくださいね。 また、犬に顔を咬まれてひどい傷を負ってくる方が来院されることがたびたびあります。場合によっては形成外科への紹介が必要になります。私自身も動物は大好きですが、ペットとの距離感は大切だなと考えさせられます。
鈍器にぶつかる、指をつめるなど、強い衝撃で皮膚や筋肉の組織がつぶれ、高度に損傷を受けた状態を「挫滅創 (ざめつそう)」といいます。交通事故や労働災害などでよく起こります。
挫滅創は、神経や筋肉などの組織が複雑に破壊される場合が多く、治りが遅いケガです。また、瘢痕(はんこん)などの傷痕が残りやすいのも特徴ですので、病院で適切な治療を受けるようにしましょう。