初期段階での処置が、とても大切です。
骨折すると激しい痛みがありますので、大抵の場合「これはおかしい。折れているかもしれない」と気づきます。また、骨が完全に折れて、通常なら曲がらない方向に曲がったりすると、明らかに骨折とわかります。
しかし、痛みがそれほどでもなく、見た目に変形していなくても骨折していることは多いものです。とくに「捻挫」や「突き指」だと思っていたら骨にひびが入っていたということは、しばしば起こります。ひびが入っているかどうかを外から観察するだけで見分けるのは難しく、医療機関でレントゲンを撮ってはじめて正確な診断が可能です。
軽症の骨折であっても、放置すると骨がうまくくっつかず、変形したり、治癒までに時間がかかることがありますので、初期にはかならず整形外科を受診するようにしてください。
骨折は、損傷の状態や程度などによって分類されます。そのなかで、代表的なものをあげてみましょう。
■皮下骨折(単純骨折)(閉鎖骨折)
患部の皮膚が破れておらず、傷口がない状態の骨折。骨がぐちゃぐちゃに折れていても、骨が身体内にとどまっていれば「単純骨折」と呼びます。
■開放骨折(複雑骨折)
折れた骨が傷口から外へ露出している状態の骨折を指します。複雑骨折という言葉が誤解を生じるため、近年は「開放骨折」と呼び「単純骨折」と区別しています。骨が身体の外側にあるということは、感染症の危険性がきわめて高く、緊急手術の対象となります。
■疲労骨折
過度のスポーツや労働などにより、特定部位に継続的に力が加わって、小さなひびがたくさん入った状態の骨折。
■病的骨折
内因的な疾患(骨粗鬆症・がん・骨腫瘍・骨髄炎など)が原因で起こった骨折。
■若木骨折
子供に多い骨折。ぽっきりと折れずに、千歳飴が折れずに曲がるような状態になる。外から見て手が曲がってしまっていても、触らなければあまり痛がらないことも多いため、小さい子供は特に注意が必要。骨端線(骨が成長する時に伸びる場所)部分を骨折で損傷すると、骨の成長が止まったり、変形をきたすことがあるので注意が必要です。
骨折すると、ほとんどの場合で激痛を感じます。また、数時間のうちに患部周辺が強く腫れあがってきます。また皮下骨折の場合、骨や周辺組織からの内出血も起こします。程度にもよりますが、腫れが引くまで2〜3週間ぐらいかかることが多いです。
とくに注意したいのは「コンパートメント症候群」という合併症です。骨折によって周辺組織が腫れあがると、血管や神経を圧迫してしまいます。そのために血流障害や神経麻痺を起こし、最悪の場合、骨折が完治しても機能障害が残ってしまう可能性もあります骨折の治療においては、早期にコンパートメント症候群を予防することも重要なポイントのひとつです。
骨折治療において基本となるのは、骨をもと通りの正しい位置に固定することです。骨がずれていなければそのまま固定しますが、開放骨折の場合や、骨がずれている場合には、固定する前に正しい位置に戻さなくてはいけません。これを「整復(せいふく)」といいます。整復には強い痛みがともないますので、麻酔をしたうえで行います。
固定には、大きく分けて「外固定」と「内固定」があります。
柔道整復師が開院している「接骨院」や「ほねつぎ院」では、医師の同意がない場合は骨折に対して施術することが原則としてできません。(応急処置としての施術は認められていますが、治療ではありません。)骨折を疑うような場合は、速やかに医療機関を受診して下さいね。
手術を行わずに整復をし、ギブスや副木によって外から固定する方法。ほとんどの骨折は「外固定」が行われます。レントゲンを使用して、正しい位置に骨が固定されていることを確認します。
また、整復を行っても、周辺の筋肉によって骨が引っ張られ、再びずれてしまう恐れがあるため、腕や脚を継続的に引っ張る「けん引」が行われる場合もあります。子どもは回復が早いため、けん引だけで治療が完了することもあります。
金属製のプレート・棒・ピン・ワイヤーなどを使用して、手術で骨を直接固定するのが「内固定」です。プレート固定では、滅菌した金属製(チタンなど)のプレートを骨折部分にあてがいネジで固定します。ピンを使う「ピンニング」では、先の尖ったワイヤーを骨に通して固定します。また、骨の端から長い棒を打ち込んで固定する場合もあります。いずれもレントゲンを撮りながらの手術になります。手術後はやはり一定期間ギプスなどで外から固定する必要があります。
通常の場合、骨は3ヶ月程度で癒合しますが、骨折部のずれが大きい場合や、周辺組織の損傷が激しいなどの要因により、治癒期間が長くなる場合があります。また高齢者や、感染症や糖尿病などの合併症、喫煙やアルコール多飲などの生活習慣によっても治りにくい傾向があります。このような治癒期間の長い骨折を「難治性骨折」といいます。
このような場合に有効なのが「超音波骨折治療法」です。これは、低出力超音波パルスを毎日20分ほど患部に当てるもので、ある臨床試験では、38%程度治癒期間を短縮する効果があるとされています。当院でも超音波骨折治療法を行っています。必要に応じて「超音波骨折治療器」を貸しだしていますので、機器をご自宅に持ち帰っていただき、ご自身で治療していただくことが可能です。
難治性骨折と診断された方は、健康保険が適用されます。
骨折部の修復時につくられる仮骨は、適度な負荷をかけると癒合が促進されるという性質を持っています。この性質を利用して修復をうながすために、骨折した部位に適切な荷重をかける「部分荷重」というリハビリテーションが順次行われます。負荷をかけすぎて再骨折が起こらないよう、癒合の状態を見て慎重に行う必要がありますので、かならず医師・理学療法士の指導のもとで行います。
また、長期間患部を固定していると、日増しに患部や周辺の筋力が衰えてきます。まったく動かさないでいると、1日に3〜5%も筋肉の重量が減るといわれていますので、数週間もすると、目に見えるほど腕や脚が細くなってしまいます。また、関節も硬直しますので、腕や脚を曲げ伸ばししづらくなってしまいます。
骨折治療とあわせて、筋力強化運動や関節の可動域修復訓練などを行っていくことがとても大切です。こうしたリハビリテーションは、医師の指示のもとに理学療法士が行います。
とくに高齢の方は、身体をあまり動かさないでいるとすぐに全身の筋肉が衰えてしまいます。骨折した部位のリハビリテーションには、医師の指導のもと、段階をふまなければいけませんが、ケガをした部位以外の筋力なども鍛えるため、リハビリテーションはできるだけ早期から行ってほしいと考えています。いざ足の骨が治ったときに、脚の力を支える為の力がないと困りますからね!