整形外科では「巻き爪」や「おでき」などの身体表面に生じた異常についても治療します。すぐに治さないと命にかかわるという類のものではありませんが、放っておくと重症化することがありますので要注意です。
現代の靴社会が作ってしまった、巻き爪。日本人では10人に1人が巻き爪であるといわれています。近年画期的な治療法が開発されています。
巻き爪とは、爪がクルっと巻いた状態になってしまうことです。ほとんどの場合、左右問わず足の親指に起こります。
老若男女問わず巻き爪になる可能性があります。症状がひどくなると、爪がラッパのように筒状になったり、「の」の字になってしまいます。このように変形すると爪の端部がトゲのように肉に食い込んだ陥入爪(かんにゅうそう)となり、炎症をおこすので激しい痛みを伴います。血液と膿が出てくることもあります。
初期の段階では、自分が巻き爪であると気付かずに、痛みや感染を来たしてから来院する方が多いようです。
爪が巻いてしまう原因は、何と言っても深爪にあります。もともと爪が薄いなどの体質的なこともあるでしょうが、足は身体全体の重さを支える大切な部位。その中でももっとも荷重が集中するのが、親指です。深爪になると、爪の端に圧力が集中して、どうしても肉に食い込みやすくなります。また常に皮膚と接触している部分の爪は、成長が遅くなります。そのため、徐々に悪化してしまうのです。
なんと歩き始めの赤ちゃんでも、深爪にしてしまうと爪が巻いてしまいます。爪が伸びる速度が速いため、いっそう注意が必要です。
爪が水虫になってしまうと、爪自体が肥厚して脆くなります。自分では切りにくくなり、気付いたら巻き爪になってしまうという方が大勢います。この場合はまず爪水虫の治療を行わなければいけません。爪水虫は内服薬で治療を行います。また塗るタイプの薬も開発されています。
先端の細い靴や、サイズの合わない靴を履いていると、足先を圧迫して爪の巻きを助長してしまいます。また、外反母趾などの危険性もありますので、自分の足の形に合った靴を選ぶようにしたいですね。
ケガをして爪が剥がれたあとは、巻き爪になりやすいといわれています。爪がない状態での足先にかかる負荷が大きいためでしょう。新しい爪が健康に生えてくるまでは、変形や余分な別の爪が生えてこないか注意したいものです。
ひとむかし前は、整形外科での巻き爪処置として「抜爪」が行われていました。つまり、爪を抜いてしまうのです。しかし現在ではその治療法は適切ではないと見直されています。
当院では、三重県下ではまだ珍しいVHOという矯正技術を行っております。
VHOとはメディカル・フスフレーガーのエルヴィラ・オストホルト氏によって1979年に創設したオートニクシー研究所で開発された巻き爪矯正技術につけられた名称です。重度の巻き爪の矯正法として、手術以外の選択肢=血を出さず、いたくない方法を開発してVHOと命名しました。
Virtuose Human Orthonyxie の頭文字をとったもので、「熟練の技による人間的な巻き爪矯正法」というような意味です。
従来からの一般的な治療法としては、麻酔をして爪に孔をあけ、ワイヤーやプラスチックシートを用いて爪を矯正する方法があげられます。しかし、VHOは麻酔をせずに、痛みを伴わず、血も流れない優れた矯正技術です。
専用のワイヤーを爪の外側に引っ掛けるだけ。一見簡単に見えますが、個々の形に応じてワイヤーを選択し、カーブや張り具合を調節するという熟練の技術を要する為、ライセンス登録が必要です。
一回の矯正手技は15分〜30分程度ですみます。矯正当日から入浴や運動ができますし、その後もいつもどおりの生活を送ることができます。
ワイヤーを3ヶ月毎に交換し、約一年かけて正常な爪の形に整えます。接着剤を用いることもありませんので、衛生的です。爪を切ったり縫い付けたりすると、爪が小さく変形してしまうというデメリットがありました。親指の爪が不自然に小さくなると、見栄えもよくありませんし、つま先に踏ん張りがきかなくなる、足に力が入りにくくなるという大きな欠点があります。
VHOによって矯正した爪は、人間の持つ自然治癒力を活かした健康的な爪になります。ぜひお気軽にご相談下さい!
おでき・腫瘍には、さまざまな種類があります。
代表的なものについて、それぞれ簡単にご説明いたします。
毛穴に、黄色ブドウ球菌、あるいは表皮ブドウ球菌が感染し、赤いぶつぶつができるもの。膿(うみ)がたまることもありますが、痛みやかゆみはほとんどありません。
軽いものですと、特に治療の必要がない場合もありますが、次々にできたり、大きくなってきたりしたときには、化膿止めの抗生物質が処方されます。
簡単にいうと、毛包炎の大きいもの。「せつ」ともいいます。毛包炎は毛穴の入口部分だけに炎症を起こすことが多いのですが、おできは毛包の底や周辺組織にまで炎症がおよぶもの。赤く腫れ上がって、中心部分には膿がたまります。ひどいおできの場合には、発熱をともなうときも。放っておくと、菌が血液中に入りこんでしまう恐れがあります。
抗生物質を服用し、細菌の増力を抑制します。また、膿が多い場合には、切開して排出することもあります。
おできがさらにひどくなった状態のもので、毛包炎やおできと同じく、黄色ブドウ球菌・表皮ブドウ球菌の感染が原因です。おできよりもさらに深い部分に膿がたまり、ひどい場合には、にぎりこぶしくらいの大きさになってしまうことも。おしりや肩、首の後ろ・太ももなどにできることが多く、強い痛みがあります。熱が出ることもあります。
抗生物質の服用や、場合によっては点滴を行うこともあります。多くの場合、切開してなかの膿を出します。
ガングリオンは、関節まわりにできる嚢腫(のうしゅ)で、女性に多く見られます。内容物はゼリー状の脂肪や繊維質ですが、触った感触が硬いため、軟骨のようにも感じられます。小さいものですと数ミリ程度の大きさですが、大きい場合ピンポン玉くらいの大きさになることも。
関節や腱・腱鞘が変性して起こるといわれていますが、詳しい発症の原因は現在でもよくわかっていません。もっともできやすいのが手首の関節周辺です。
ガングリオンは、ほとんどの場合は無痛です。良性の嚢腫ですので、それほど心配する必要はありませんが、ふくらんでいるのが見た目に気になりますよね。また、一度治療しても再発することが多いので困りものです。
注射器によって内容物を吸い取るというのが、もっとも一般的な治療方法です。場合によっては、摘出手術を行うこともありますが、再発してしまうこともあり、保存的治療で様子を見るのがいちばんかと思います。
昔はガングリオンができたら「自分で押しつぶせば良い」などといわれたりしたこともあるようですが、二次的に別の組織を痛めてしまう心配がありますので、絶対にしないでくださいね!