関節リウマチというと、怖い病気であるというイメージを持たれるかもしれません。
既に罹患している患者様の苦痛や悩みを、少しでも和らげたい、
そんな気持ちで日々診察を行っております。
関節リウマチとは
関節リウマチの発症のピークは30〜40歳代で、女性に多く、男性に比べ5〜6倍の確率で発症します。しかし、60歳代からの発症も多く、この場合を「高齢発症関節リウマチ」と呼んでいます。高齢発症関節リウマチでは、男女の発症率に差はありません。また、15歳未満で発症する、「若年性関節リウマチ」もあります。
骨や関節、筋肉など、体を支え動かす運動器官が、全身的な炎症を伴って侵される病気を総称して「リウマチ性疾患」といいます。このうち、関節に炎症が続き、関節が徐々に破壊されやがて機能障害を起こす病気が「関節リウマチ」です。
■左右対称性の症状
特徴的な症状は「関節の腫れ」です。もっとも起きやすいのが、手首や手足の指の関節です。症状は「対称性」で、左右両側の関節にあらわれることが多いのが特徴です。関節リウマチとよく似た病気に「変形性関節症」がありますが、この病気は、関節を動かしたときに痛みが出やすいものです。一方、関節リウマチは、腫れを伴い、じっとしていても痛いのが大きな特徴で、その痛みは「かみつかれたような痛さ」とも表現されます。
免疫とは、体内に侵入してきた細菌やウイルスを外敵として認識し、攻撃・排除するシステムです。この免疫システムに、何らかの原因で異常が生じると、自らの体の一部を外敵と誤って認識し、攻撃してしまいます。こうした現象によって起こる病気を「自己免疫性疾患」と分類しています。
関節リウマチも「自己免疫性疾患」の一つです。原因は不明ですが免疫システムに異常をきたし、関節に炎症が生じます。関節内の「滑膜(かつまく)」という組織が攻撃によって変性し、関節内部の軟骨や靭帯を破壊しながら、やがては骨まで破壊が達してしまいます。自己の免疫によって関節内の組織が破壊されるため、腫れや強い痛み、変形を伴うのです。
早期発見・早期治療のために
たとえ重症化していても、現在では手術療法が発達し、自立した生活を取り戻すことができるようになってきました。しかし、できるだけ早く発見して、早くから治療を始めることで、重症化や病気の進行を抑えることができます。
【関節リウマチ セルフチェック】
□関節の腫れ・むくみがある。
□ 理由が分からないが関節の痛みがある。
□ 朝起きたとき、手がごわごわして動きにくい。
(15分程度こわばりが持続する)
□ 何となく手に違和感がある。
□ 左右同じ場所に痛みがある。
□ 長時間歩くのが大変。
□ 力が入らず、細かい作業がしにくい。
これらの状態が1週間以上持続している方は、早期に受診してご相談下さい。
診断の流れ
治療法には大きく分けて「薬物療法」「リハビリテーション療法」「手術療法」があります。
■薬物療法
リウマチの治療では、「非ステロイド性抗炎症薬」「抗リウマチ薬」を使用します。
「非ステロイド性抗炎症薬」は、病気の進行を抑えることはできませんが、痛みや炎症をすばやく抑えてくれますので、患者さまの日常生活を支えるうえで大切な薬です。
「抗リウマチ薬」は、炎症を起こす原因となる免疫システムに直接働きかけてくれます。病気の進行を抑えるために重要な薬です。効果が現れるまで1ヶ月〜半年くらいかかりますが、持続的な効果が期待できます。
上記のほかに、とくに炎症が強いときには、「副腎皮質ホルモン薬(ステロイド)」を使うと症状が劇的に改善する場合があります。ただし、ステロイドは副作用も大きいため、炎症が激しいときに限定し、注意して使用する必要があります。
さらに最近、骨の破壊を遅らせる画期的な薬が開発され、関節リウマチの治療は、大きく進歩しました。それが、最新バイオテクノロジーによってつくられた「生物学的製剤」と呼ばれるもの。リウマチの炎症によって軟骨や骨が破壊されるのは、免疫や炎症に関係するサイトカイン(活性因子)のなかの、「TNFα( 腫瘍壊死因子)」という物質の働きによるものであることが分かってきました。生物学的製剤は、この「TNFα」の働きを直接抑えることができ、多くの症例において非常に効果的な結果が出ています。ただし、免疫システムを抑え込むため、正常に働くべき免疫まで働かなくなる可能性があるなど、副作用もありますので、慎重な処方が必要です。
生物学的製剤は、さらなる進歩が期待されており、今後10年間でリウマチの治療は劇的に変わると言われています。
■リハビリテーション療法
リウマチのリハビリテーションで中心となるのは「運動療法」で、おもに関節可動域の修復、筋肉増強を目的として行われます。関節の痛みが強い場合に、あまりに負荷の高い運動は良くありませんが、逆にずっと安静にしていると筋力も骨密度も徐々に失われ、病状を悪化させてしまう恐れがあります。また関節は、動かすことによって新陳代謝に必要な栄養が送られる仕組みになっていますので、その意味でも適度な運動が必要です。
また筋肉の緊張をほぐし、痛みをやわらげるために「温熱療法」も行われます。
間違った運動は、関節を痛めてしまう心配があるため、運動療法は、かならず理学療法士の指示のもとで行ってください。
■手術療法
手術は、「関節固定術」「滑膜切除術」「関節形成術」などの方法があり、病状により、最適な手術法を選択していきます。また、関節が高度に破壊されてしまっている場合、「人工関節置換術」がよく行われています。人工関節は改良が重ねられており、最近のものでは20年以上安定して使えるものも出てきています。
※手術療法が必要な患者様については、提携病院にご紹介いたします。