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椎間板ヘルニア・ぎっくり腰

腰や首の病気としてよく知られる椎間板ヘルニア。
ある日突然襲いかかるぎっくり腰。
このページでは、その原因や治療法について解説します。

椎間板ヘルニア

 人間の背骨(脊椎)は、約30個の小さい骨の集合でできています。背骨が、細かく分かれているからこそ、人間は腰や背中をひ曲げたりねったりして柔軟に動くことができます。背骨の骨と骨の間には「椎間板」という軟骨があります。椎間板は、衝撃を受けとめるクッションの働きをしており、椎間板のおかげでスムーズに動けるのです。
 椎間板を細かく見ると、中心部分のゼリー状のやわらかい「髄核(ずいかく)」と、それを包みこんでいる「繊維輪軟骨(せんいりんなんこつ)」という軟骨部分に分かれます。

 「椎間板ヘルニア」とは、外側の軟骨部分が損傷し、なかに収まっているべきやわらかい「髄核」が飛び出した状態のこと。髄核が飛び出すのではなく、軟骨部分自体が変形して突出することもあります。その飛び出した椎間板が、背骨を通っている神経を圧迫してしまうため、痛みが発生するのです。

椎間板ヘルニアが起こる原因は?

 椎間板ヘルニアは、30〜50歳の方に多発します。これは、何十年も重い体を支え、衝撃を受けとめてきたため、どうしても椎間板の軟骨がすり減って弱くなっているためです。また、髄核の水分が減ってきて弾力性がなくなり、損傷を受けやすくなることも要因のひとつです。これらは加齢が原因ですので、ある意味仕方がないことだといえるでしょう。ただ50歳を過ぎると、今度はなかの髄核が硬くなりはじめ、飛び出しにくくなるため、逆に起こりにくくなります。
 姿勢の悪さも要因のひとつとなります。猫背になるなど、背骨が曲がってしまうと、椎間板にも不自然な歪みを生じ、そこに余計な負担がかかって、痛めやすくなります。
 また、くしゃみ、普段は持たないような重いものを持ち上げたり、無理に腰をひねったり、自動車事故などにあって強い衝撃を受けるなど、外的な要因でヘルニアが起こることもあります。
 大人だけとは限っておらず、10代の子どもに発生する「若年性椎間板ヘルニア」もあります。

おもな椎間板ヘルニアとその症状

■腰椎椎間板ヘルニア

 もっとも多いのが腰のヘルニアで、ヘルニア全体の約80%程度を占めるといわれています。おもな症状は腰痛です。しかし、飛び出した椎間板が神経を圧迫し、脚に痛みやしびれが発生することもあります。また、脚の付け根(おしり)のあたりが痛むこともあります(坐骨神経痛の症状)。
 重症のヘルニアでいちばん怖いのは、運動神経や感覚神経が損傷し、神経が麻痺してしまうこと。こうなると脚を動かせないなど、重大な機能障害が現れる場合もあります。機能障害が起こってしまった場合、手術が必要となります。

■頚椎椎間板ヘルニア

 腰の次に多いのが、首(頚椎)のヘルニアです。おもな症状は首の痛みやこりですが、腰の場合と同じように、圧迫している神経が担当している部位に痛みが発生することもあります。手や腕のしびれはその代表的なものです。片手だけであったり両手であったりしますが、箸でものをつかむなどの細かい動作がしづらくなります。脚が痛んだりこわばったりすることもあります。
 腰のヘルニアと同じように、神経の麻痺が起こらないように、早期に治療することが大切です。

椎間板ヘルニアの治療方法は?

 椎間板ヘルニアは、原則的には手術を行わずに保存療法で治療します。非ステロイド性消炎鎮痛薬、筋弛緩(きんしかん)薬、神経賦活(ふかつ)薬などが処方されるとともに、患部を安静にするためにコルセットを装着します。また、さまざまな理学療法も行われます。
 椎間板ヘルニアは、程度によって症状の強さはさまざまですが、重症の場合はかなり激しい痛みで、立ち上がれないこともあります。痛みが激しい場合は、局所麻酔薬を使用した「神経ブロック」も行われます。
 ほとんどの場合、こうした保存治療で治りますが、どうしても治療効果が現れないときや、神経麻痺を起こしてしまっているときは、手術の適応となります。

院長のひとりごと

 脊椎動物のほとんどは、四足であるため背骨が地面と水平の状態になっています。しかし人間は、直立して2足歩行をはじめたため、背骨が地面と垂直の状態になり、重力をまともに受けるかたちになっています。つまり人間は、もともと背骨に負担がかかりやすい構造をしているんですね。
 椎間板ヘルニアは、人間が2足歩行とひきかえに背負った、宿命といえるかもれません。

ぎっくり腰

 ぎっくり腰は、重いモノを持ち上げたときや急に体をひねったとき、無理な姿勢をしたときなどに突発的に襲う腰痛のことで、正式には「急性腰痛症」と呼ばれています。
 ぎっくり腰の多くは腰の捻挫であり、腰椎を支える靭帯が、急激な負荷に耐えきれず損傷してしまうのです。捻挫ではなく、筋肉や軟骨を損傷している場合もあります。
 軽い場合は2〜3日で治りますが、重傷の場合、2週間〜3ヶ月程度痛みが続くこともあります。
 痛みの強い間は安静にしていることが何より大切です。体を動かさず、寝ている方がいいでしょう。無理をすると治るのが遅くなり、場合によっては、クセになって慢性化させてしまう恐れがあります。
 また、「腰椎椎間板ヘルニア」が隠れている場合があります。この場合は安静にしているだけでは治らず、きちんとした治療が必要です。たかがぎっくり腰とたかをくくらず、整形外科できちんと検査し、適切な処置をしてもらいましょう。

ぎっくり腰を予防するには?

 ぎっくり腰は、運動不足の方がなりやすいともいわれています。デスクワークが中心の仕事で、長時間イスに座りっぱなしの方は、休憩時間に腰のストレッチを行うなどして、腰を柔軟にしておくと予防につながります。
 また年齢を重ねると、どうしても腰の筋肉などは弱ってきて、ぎっくり腰にもなりやすくなります。普段から適度な運動を心がけるとともに、重いものは無理して自分だけで運ぼうとしないなど、腰をいたわってくださいね。

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