小児期の整形外科疾患は、将来にわたって影響を与える場合があります。
当院ではキッズスペースを設け、安心してお子様に受診していただけるような
環境整備にも努めております。
成長期の子どもには、大人には見られない特有の疾患があります。また、骨格ができあがっていないがために起こしやすい外傷もあります。
小さい子どもは、自分の不調について、正しく大人に伝えることができません。また、大人の経験則ではピンとこないため、見逃してしまいがちです。お子さんからの訴えがそれほど強くなかったとしても、そこに重大な疾患が隠れている可能性があります。少しでも気にかかることがあったら、何でもご相談ください。
整形外科で取り扱う小児疾患の、代表的なものをピックアップして解説します。
股関節がはずれたり、ずれたりして脱臼を起こした状態。圧倒的に女の子に多く、男の子の約10倍の確率で起こるといわれています。生後3〜4ヶ月検診で発見されることが多いようですね。
先天性という名前がついていますが、約9割は後天的なものです。もともと赤ちゃんは関節がゆるいので、ちょっとしたことで股関節がはずれてしまいます。仰向けに寝た赤ちゃんのいちばん自然な脚の姿勢は、カエルのようなM型ですので、無理に伸ばそうとしたり、不自然な方向に足をひねらないよう、オムツ替えなどのときには注意してあげてくださいね。
股関節を脱臼しても、赤ちゃん本人には痛みなどの自覚症状はありません。足を動かしたときにポキポキ鳴るとか、歩き始めが遅く、足を引きずるようにしている場合などは、脱臼を疑ってください。足の長さが左右で違うように感じたときも、要注意です。
きちんと治療をすればほとんどの場合治りますので安心してください。
脱臼の程度により治療方法は異なりますが、関節が少しずれた程度の脱臼の場合は、だっこの仕方やオムツの当て方などの日常のお世話の仕方を工夫するだけで治ります。完全に脱臼している場合は「リーメンビューゲル」と呼ばれる、赤ちゃんの股関節脱臼を戻す専用の装具をつけて治療します。
股関節脱臼自体は、それほど深刻にならなくてもよい病気ですが、気づかずに放っておくと関節が変形してしまう恐れがあります。また、成長してから「変形性股関節症」になってしまう可能性もあります。ですので「疑わしきは病院に」を心がけてくださいね。
大腿骨頭すべり症は、成長期に特有の疾患で、ふともも部分の骨(大腿骨)の、足の付け根側の先端(大腿骨頭)がすべって、股関節からはずれてしまう病気です。10代前半の肥満の子どもによく見られ、男の子は女の子の3倍多いといわれています。
はっきりとした原因はわかっていませんが、ホルモンの変化が関わっているのではないかと考えられています。転倒などによって起こる場合と、外傷がないのに徐々に進行する場合があります。
股関節部分の痛みがおもな症状ですが、痛みの強さは個人差が大きく、動かしたときにちょっと痛い程度のこともあれば、激痛で歩くことができない場合もあります。
不思議なことに、痛みが膝からきているように感じられることもあります。膝の病気だと思い込んでいて、大腿骨頭すべり症を見逃してしまうこともあるようですので、慎重な検査が必要です。
急速に病状が進んだ場合、股関節からはずれた大腿骨頭が血行不良となり、骨の一部が壊死してしまう場合もあります。成長期の子どもの場合、壊死が起こっても、やがて再生するので大丈夫なのですが、きちんと治療しないで放置すると、骨が変形してしまう場合があります。
大腿骨頭すべり症の治療においては、多くの場合、大腿骨頭を金属製のピンやネジで固定したり、骨の一部を切って修正する手術を行います。
2〜12歳、特に5〜10歳の男の子によく見られ、股関節につながっている大腿骨頭に血行障害が起こり、骨の一部が壊死してしまう病気です。なぜ血行障害が起こるかは解明されていません。成人の場合の壊死とは違い、一定期間を過ぎると血行がもとに戻り、3年程度で自然に骨が再生して治ります。しかし、適切な治療を行わず放置すると、股関節が変形してしまい、将来「変形性股関節症」となる可能性もあります。
外傷を受けていないのに股関節に痛みを感じたり、歩くときに足を引きずったりという症状がみられます。大腿骨頭すべり症と同じように、膝に痛みを感じる場合もあるので、慎重な診断を必要とします。
手術によって治療を行う場合と、手術を行わず、装具によって治療する保存療法があります。保存療法の方がリスクは少ないのですが、数年にわたって装具をつけて生活しなくてはならず、子どもにとっては不自由でつらく感じるでしょう。手術を行えば装具をつけなくて良いのですが、リスクも伴います。また最終的な治療成績は、手術を行っても装具療法で治療した場合とほとんど変わりません。
どちらの治療方法を選択するかは、子どもさんの個性や、親御さんの方針などによってケースバイケースです。私たちも最善の方法をいっしょに探っていきたいと思います。
ペルテス病は、名前は怖い感じがしますが、きちんと治療すれば治る病気です。やはり大切なのは早期発見です。
これらのほかにも、「若年性椎間板ヘルニア」「骨形成不全」「外反母趾」「偏平足」「歩行異常」「スポーツによる外傷・障害」など、子どもに多いさまざまな疾患・外傷を診ております。
どんな病気でも、放置することで悪化することはあれ、良くなることはありません。子どもさんが「足が痛い」と訴えてこられたら「成長痛だろう」と軽く考えずに、整形外科を受診するようにしてあげてくださいね!